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「ガタガタ、説教じみたことばかりみんな言う。ただ、私はこうした方がいいって思ったことをしただけなのに。見た目や遅刻、欠席だけでこんな風に言われないといけないの?お母さんなんて来ないよ!私のことなんてもう、何年も見てないんだから!」
息が上がる。
知りたくない情報を、言いたくない、認めたくない記憶を思い出してしまうから。
お母さんは私を見ていない。
そんなことはもう、何年もわかってる。
父に愛人ができた時。離婚した時。母に、愛人ができた時。
その度に言われた言葉。
「お前なんか産まなきゃよかった。」
お母さんが私にいつも言う。私なんか…。
「私なんか生まれなきゃよかったんだ!誰も私を見てくれないなら、私なんて、生まれなきゃよかったんだ!」
視界が揺らぐ。目頭が熱くなる。
「貴方みたいに、いかにも親に愛されているような人なんて、私の気持ち、わからないでしょう?誰でも愛されて、みんなに尊敬されて。」
「わかるよ。」
遮るように、話された。
その時の顔は、今まで笑顔だった彼女とは別物だった。
今までの笑顔が、一瞬で嘘くさく感じた。
「わかるよ、私は別にみんなに愛されてるわけじゃない。愛されるような私にしてるだけ。」
神妙な顔をして私を見た。
「春井さんは、すごいね。自分を持ってて。私、怖くて先生に反抗できないもん。自由で、人ができないことや、人がしたくないことを率先してする。偽物の私より、よっぽど優等生だよ。」
「偽物?」
彼女は、私の問いには答えなかった。
聞かれたくないような、思い出したくないような、そんな目をしていた。
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