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今度は、違う意味で心拍数が上がった。
染めたからであろう。少しバサバサした髪質。あと少しで、真由の顔を触ってしまいそう。
そう思うと私の顔が赤くなってしまう。
「い、いいんじゃないかな。染めるけどここまでしか痛んでないなら、元が髪の毛、丈夫なんだね。」
「かもしれない〜。次も同じ色頼むんだ。」
私の心情なんぞ知らないだろう。彼女はやっぱり無邪気だ。無邪気に、私を翻弄する。
髪の毛から手を離す。
彼女は、窓の外の部活動生が気になったようだ。
茶色みがかった切れ目の瞳が、誰を見ているかはわからない。
「何か気になるの?」
「いや、明日美里は陸上だっけ。」
「火曜日でしょ?うん。部活に行く。」
「ええ〜。じゃあ、明日は会えないのね。」
「ごめんね。私もここにいるのは楽しいんだけど。」
「いいけどさ、あー。明日何しよう。」
伸びをする彼女。
「さあ。どうしようね。」
動揺を隠すため、問題集をみる。
真由がさっき教えてくれた為、解きやすい。
私は、きっと、この時間が。
月曜日だけ、春井真由といる国語準備室に行かなければ、私が私ではなくなってしまう。
私は、姉のように。
姉のような、才能がある人にならなくてはならないから。
ここ以外は、私ではない私になる。
それが私の人生。
川畑美里の人生。
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