私はあの子になりたかた

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10分ほど歩くと、あたりは住宅地だった。  数年前は田舎で住んでる人は少なかったようだが、開拓が進んで、ここら一帯は住宅地になっている。  坂もなく平坦だから、住みやすいのだろう。  色々な人が、ここに家を立て始めている。  その中に、赤いレンガの家が見えてきた。  その家に入る前に、胸を手に当てて願う。   「どうか、お母さん達が私を見てくれますように」    扉を開け、中に入ってすぐ。  下駄箱には、たくさんのトロフィーや賞状。そして、それらを抱えている姉の写真が所狭しと並べられている。  ショートカットの、姉。それらを持っている姉は、満足そうに笑っている。  私の名前の賞状なんかなく、下駄箱は姉の実績しかなかった。  私は、見ないふりをしたくて靴を脱ぎ、廊下に向かう。    廊下を進むとすぐ右側にはリビングがある。扉をあけると、母がハンバーグを作っている最中だった。 「ただいま、お母さん。」 「あ。美里、おかえりなさい。今日はハンバーグにしたの。パートも休みだったから!」 「そうなんだ。」  笑顔でいう母に私は相槌を打つ。  正直、肉の味が苦手だ。あの臭みがどうしても好きになれない。  でも、母を困らせたくないから。 「お姉ちゃん喜ぶね。」  と笑顔で言ってみせる。  それを見れば 「そうね、2人は味の好みが似てるから助かるわ。」  と母も笑顔で返す。  そう。母も知らないのだ。  私が肉が嫌いなのを。姉が肉が好きなのを知っていけれど。
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