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「うむむ。あんまり詰め込まない方がいいよ。ぱーっとやったらうまくいくんだから。周りが助けてくれるよ。」
「私は、私の力で頑張りたいの。」
「そう考えるのも自由だけどさ、それで体調崩したら元も子もないよ。」
姉は、タイヤのついた椅子を利用して私の方に来る。
「あんたは頑張ってるよ、大丈夫」
彼女と話すと、私は強制的に「私」になるし、彼女にはなれない劣等感を抱いてしまう。
そう、彼女にとって私はまだ「教えてあげる」存在に過ぎないのだ。
唇を噛む。
結局、この人は何をしたいのだろう。私の中にズカズカ入ってきて。
「姉さんは…何をしに来たの。起こしに来たの?」
そういうと、彼女は猫の様な笑顔で
「そろそろご飯だから呼びに来た」
…だったらこの会話、意味があったの。
小さく息を吐く。
これが姉だ。
何となく掴めない様な人で、生きていくのが簡単で。才能がある。
こんな人になりたかった。私だって姉のような存在になりたかったよ。
「すぐ行くってお母さんに言ってて。部屋着に着替えるから。」
「ええ〜。一緒に行こうよ〜。」
足をバタバタさせながら子供返りをする姉。
埃が舞うからやめてほしい。
「いいから。先に食べてきてよ。私も着替えたいから。」
「何〜?恥ずかしいの?ついてるのは同じでしょ?」
「…出てって!」
胸元を押さえながら大きな声で言う。
「ほらほら〜。揉ませろ〜」
「姉ちゃんみたいな豊満なものはありません!いいから!」
さらに大きな声で言うと、姉はしょげた顔しながら
「ちぇ。けちんぼお。」
と言い、部屋から出て行った。
姉がいない部屋は、少しだけ息がしやすかった。
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