私はあの子になりたかた

8/15
前へ
/25ページ
次へ
「うむむ。あんまり詰め込まない方がいいよ。ぱーっとやったらうまくいくんだから。周りが助けてくれるよ。」 「私は、私の力で頑張りたいの。」 「そう考えるのも自由だけどさ、それで体調崩したら元も子もないよ。」  姉は、タイヤのついた椅子を利用して私の方に来る。 「あんたは頑張ってるよ、大丈夫」  彼女と話すと、私は強制的に「私」になるし、彼女にはなれない劣等感を抱いてしまう。  そう、彼女にとって私はまだ「教えてあげる」存在に過ぎないのだ。  唇を噛む。  結局、この人は何をしたいのだろう。私の中にズカズカ入ってきて。 「姉さんは…何をしに来たの。起こしに来たの?」  そういうと、彼女は猫の様な笑顔で   「そろそろご飯だから呼びに来た」  …だったらこの会話、意味があったの。  小さく息を吐く。  これが姉だ。  何となく掴めない様な人で、生きていくのが簡単で。才能がある。  こんな人になりたかった。私だって姉のような存在になりたかったよ。 「すぐ行くってお母さんに言ってて。部屋着に着替えるから。」 「ええ〜。一緒に行こうよ〜。」  足をバタバタさせながら子供返りをする姉。  埃が舞うからやめてほしい。 「いいから。先に食べてきてよ。私も着替えたいから。」 「何〜?恥ずかしいの?ついてるのは同じでしょ?」 「…出てって!」  胸元を押さえながら大きな声で言う。 「ほらほら〜。揉ませろ〜」 「姉ちゃんみたいな豊満なものはありません!いいから!」  さらに大きな声で言うと、姉はしょげた顔しながら 「ちぇ。けちんぼお。」  と言い、部屋から出て行った。  姉がいない部屋は、少しだけ息がしやすかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加