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「のし餅いかがですかー?」
「お正月にいかがですかー?」
お客が来るときは並ぶくらい来るのに、今は全然、買ってもらえない。
「開店してからのピークが過ぎたって感じですね。次は10時を過ぎるまでお客は少ないです。お客には、家事はさておき、まず買い物をしたい軍団と家事をしてから買い物に来る軍団に分かれるんです。今はその隙間、というところですね。」
隣で花霞が分析し、ぶつぶつと小声で私に教えてくれる。へぇ面白い。この子なら私のつまらない気持ちを分かってくれそう。あのさと切り出す。
「寒いし、つまんない。なんか、面白く売りませんか?」
この人ならそうねと言ってくれる予感がしていた。
「そうね。」
花霞はこちらの目をしっかりと見て頷いた。
「ただ、うるさいのはいけません。以前それで注意されていたアルバイトを見ましたから。このスーパーは品格を大事にしているようです。ある程度の元気感を出し、かつ、執拗な売り込みはしない。」
「私、いつも買ってるような人はそのまま買ってくれると思うので、初めて買ってみようかなって人にチャレンジしたいと思いますが。」
「いいですね。では、まずは声を掛けて足を止めてもらう。興味を持った人には確実に買ってもらうように目標を持ちましょう。」
「いいね。それは、うるさくなく、品良く。」
「そして、私たちが面白く餅を売ろうなんて考えてるとは、中の社員に気付かれないように、自然に、ね。」
どっちから仕掛ける?私たちはテーブルの下でじゃんけんをした。私が勝ち。私からだ。
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