君が覚えていなくても

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「学校のプリントを持ってきたの。今日終業式なんだけど、ちょうど日直だったから」  足立はそう言って鞄から、プリント用紙を差しだした。  ああ、だから彼女は(おそらく担任の教諭に言われて)病室までやってきたのだ。 「そっか。それは悪かったね」 「お見舞いとか何も、用意してなくて悪いけど」 「そんなの気にしなくていいよ」 「なんか――御幡くん、印象変わった?」  僕をしげしげと眺めながら、足立はそう首をかしげる。 「一度死んだからじゃない?」  けっこう本気でそう言うと、足立はプッと吹きだした。 「変なの。御幡くんってもっと喋れない人かと思ってた。誰とも関わりたくない、みたいな」 「大体それで合ってるよ」  そのイメージは外れていない。 「拒絶のオーラが強すぎるんだよ。友達もいなかったみたいだし」  そう言ってから足立は、ハッとしたように口をつぐんだ。 「あ、ごめん。言いすぎたかも」 「いや、本当のことだから。スマホも持っていないしね」 「え、嘘でしょ。それでどうやって過ごしてるの」  そんな会話を延々として。  話すのは久しぶりだったけど、あまり感じたことのない心地よさに包まれていた。確かに僕は今まで、少しかたくなすぎたかもしれない。誰とも繋がれないって初めからあきらめていたせいか、他者と密接に関わるイメージを全然持つことができなかった。でも、季節が移ろうように、僕も変わり始めている。
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