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「…ぐふっ……ヘン。誰が…ごはっ……ダチを見捨てるかよ…うぐ……うがっ……」
鼻からも口からも血を流し、左目に真っ黒なあざを作りながらも、オーサンの言葉に乗せられることなく、ドラコはパンチの連打に堪え続ける。
「ケケケ…いつまでそんな痩せ我慢してられっかな……シュ…シュ…」
「…ごほっ……それに……てめえは誤解してやがる…うぐっ……俺がメイスを使ってんのは……素手に自信がねえからじゃねえ…ぐがっ……メイスの方が…くっ……手っ取り早えからだ……」
なおもパンチを食らいながら、どうにも負け惜しみにしか聞こえないような台詞をドラコが口にしたその時。
「な、なんだてめえら…うぎゃっ!」
「し、しまった…ぐへえっ!」
突然、オーサンの背後に並ぶバルトロメウス団の陣営から下卑た叫び声が上がる。
「なんだ? ……な、なに!?」
訝しげにオーサンがそちらを振り返ると、そこにはチーム・ドラコの副船長トミー・ダーティー以下十数名のメンバー達がどこからともなく現れ、バルトロメウス団の幾人かを殴り倒すと、捕らえられていたバージルを抱きかかえて確保している。
じつはドラコ、密かにトミー率いる別働隊をバルトロメウス団の背後に回り込ませ、奇襲による人質の奪還を狙っていたのである。
一見、腕力だけのただのバカに見えて、意外やドラコも頭を使っているのだ。
「ドラコ! バージルは助けた! あとは気にせず思う存分やっちまえ!」
バルトロメウス一味との小競り合いを続けながら、バージルを肩に担いだトミーがドラコに叫ぶ。
「ケッ! 人質を取り返したところで状況は変わらねえよ。んなボロボロの身体で…シュ…シュ……何ができる?」
裏をかかれたオーサンは、内心、わずかに焦りを覚えながらも、その焦りを隠してトミーの言葉に反論するのだったが。
「…うぐっ……ぐがっ……そうか……なら、安心だぜ……オラぁっ!」
腕のガードを外し、真正面からオーサンのパンチを受け止めたドラコは、切れた口元に不敵な笑みを浮かべ、瞬間、腫れ上がったその目の奥に異様な殺気を宿らせる。
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