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「さあ、俺様の新たな船出だ! この船を手始めに天下取ってやるぜ!」
無人の小舟へ乗り込んだドラコは一本マストの三角帆を開げ、オールを漕いで徐々に桟橋から離れてゆく……やがて、蒼い月明かりに照らされた沖合へと出ると、風に乗ってどんどんと速度を上げていった。
「スゲえ! スゲえ速さだ! 俺様のヤットスリップはバリバリだぜえっ!」
波頭を切り裂き、高速で夜の海を走り出した小舟の上で、デッカイ夢を抱くドラコ少年は意気揚々と歓喜の雄叫びを響かせる。
盗んだ小舟で彼が向かうのは、エルドラーニャ島の北に浮かぶトリニティーガーという小さな島だ。
そこは海賊達が占拠する悪党達の巣窟であり、島全体を要塞化しているためにエルドラニアの艦隊でもおいそれとは手が出せない状況となっている。
真っ当な水夫としての暮らしでは物足らず、ショーンの船を出奔したドラコは、その島に渡って海賊になろうというのである。
世話になったショーンや仲間に対してなんとも不義理なことではあるが、一応、「海賊の頭に、俺はなる!」と書かれた、言葉足らずな置き手紙は一応残してきている。
ともかくも、こうしてトリニティーガー島へと渡ったドラコの、海賊としての人生の第一歩が始まった……。
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