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「あ、悪龍だ……悪龍の一味だあぁぁぁーっ!」
「た、助けてくれぇぇぇーっ!」
メンバーの一人が掲げる黒地に〝赤いドラゴン〟の海賊旗を見ると、キャラベルの乗組員達は恐怖に引き攣った顔で逃げ惑い、中には海へ飛び込んでしまう者までいる。
如何せん小舟のために大型のガレオン船ようなデカい獲物は襲えなかったが、その機動力と持ち前の勇猛さで次々と襲撃を成功させてゆき、時を置かずして話題になると、サント・ミゲルを拠点とする商人達からも恐れられるようになっていたのである。
「へへへ、チョロいもんっすねえ、ドラコの兄貴」
「おうよ。いつかはキッドマンさんを超える大海賊になって、このドラコ様が天下を取ってやるぜ!」
金目の物をすべて自分達の小舟へと移し、エルドラニアの警備艇などが来る前に立ち去さろうとするその帰路で、並走する子分の言葉にドラコも気をよくしてデカい口を叩く。
そうしてドラコの一味はトリニティーガー島でも一目置かれる新興勢力へと急成長を遂げていったのであるが、どこの世界でも出る杭は打たれるというものである……。
「――最近、フランクリン・ドラコとかいうガキが調子こいてるようじゃねえか。こいつはちょっとシメとかなきゃいけねえなあ……」
トリニティーガー島の外れにある、無数のスクラップ船が廃棄された誰も近寄らない船の墓場……50名余りものガラの悪い手下達の前でそう嘯く、白のジュストコールにだぼだぼのオー・ド・ショースを履いた赤い巻毛頭の青年の名はノベンタ・オーサン。ドラコ達よりも一世代上の不良達で構成される海賊の一味〝バルトロメウス団〟の頭である。
同じ海賊の新興勢力として、成長株のドラコ達をライバル視すると、大義名分も何もなく潰しにかかってきたのである。
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