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2 七夕
私の勤め先は小さな駄菓子のメーカーだ。
ここの総務として備品を発注したり、勤怠管理をしたりしている。
ありがたいことにあんまり忙しくはない、でもやることはちゃんとある職場で、定時の8時半から17時半まで私の体は充実している。
これはすごく大事なことだと思う。
働くとお金をもらえて、なんとなく人の役に立っている気分にもなれる。
月曜日から金曜日の8時半から17時半まで、私は仕事をまっとうする。
時間のめりはりは自分のめりはりになる。めりはりとは私が私としての輪郭を持つということだ。
定時を少し過ぎた頃に、「おつかれさまでした」と言って私は席を立った。
会社は駅に近いが、この時間はまだ人通りもあまり多くない。
いつもの電車に揺られて家の最寄り駅へと帰る。
アパートは駅から徒歩5分、商店やスーパーが立ち並ぶ、賑わった街並みとは逆方向にある。
7月の空は18時過ぎだというのに、まだ全然明るい。
白と水色の薄いグラデーションの景色の中、静かなアスファルトの道を歩いていた私はぎょっとして足を止めた。
目の前で、半ズボンを履いた5歳くらいの男の子が肩を震わせて泣いていたからだ。
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