エスタブリッシュワールド

8/10
前へ
/10ページ
次へ
「ふふふ、どうしたの? 動揺が顔に出てるわよ」  彼女との心理戦だ。捨てたカードを見せたのはハンデじゃない、僕を迷わすための手段。だとすると、精神力で打ち勝つしかない。 「さあ君の番だよ。早くドローしてちょうだい」  どうする、ここで負けるわけにはいかない、諦めるな。  クラウンをじっと見つめて考えた……そうか、最後の可能性に賭けてみるか。  現実に奇跡はないと言っていたが、これはポーカーだ。奇跡を信じてみるのも悪くない。これは度胸の試しあいだ。 「わかった、僕の捨てるカードはこれに決めた」  僕はバシリと勢いよく一枚のカードを場に捨てると、一枚のカードを山札から引いた。 「それじゃあ、カード公開。ショーダウン!」  クラウンが手持ちのカードをすべて(さら)した。  ハートのエース、キング、クイーン、ジャック、そしてテン。 「ハートのロイヤルストレートフラッシュ。これに勝てる役はない。残念だけど私の勝ちね」 「いや……僕の勝ちだ。ハートより強い、スペードのロイヤルストレートフラッシュ」 「すでにスペードのエースが出ている。そんなことはありえない」  僕は手札をすべて場に広げた。  スペードのキング、クイーン、ジャック、テン、そして残る一枚は……ジョーカー! 「ジョーカーはワイルドカードだ。すべてのカードの代わりとなる万能のカード。これをスペードのエースとして使わせてもらう。君のピエロの姿を見て思い出した、ポーカーにはもう一枚の切り札があるということを」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加