エスタブリッシュワールド

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 クラウンは両手を上げて、肩をすくめた。 「おめでとう、あなたの勝ちよ。そう、それが発想の飛躍、夢、希望、野心。限界を超えたところに、隠されたカードがまだあるはず」 「それじゃあ、今の状況を打開する方法がまだある?」 「それはもう予測の範疇を超えることだから、私にもわからない。今こそ、君の切り札を出すときが訪れたんじゃない」 「僕の切り札は……」 「さあ、アイドリングは済んだかな? 現実を走り出す時がきたわ」  クラウンがトランプの束を空中に投げ出すと、カードは連なり一枚の大きな扉に変化した。 「その扉の先に、君の新たな挑戦が待っている」  僕は扉を開けると、クラウンに尋ねた。 「ありがとう、でもどうして僕を助ける?」 「私は君であり、君は私、大切な存在だからよ。これからもずっと近くにいる」 「どうしてもやっておきたいことがある。それは葉子さんに僕の想いをぶつけること」  扉の先の黒い空間に、足を一歩踏み出した。  次の瞬間、僕の頭上に鉄骨が落ちてくる情景が再現された。 「僕の切り札は……脚力!」  全神経と重心をつま先に集中し、葉子さんに向かって走り出した。  ――走れ、能力の限界フィールドを突破しろ!  硬直した状態の葉子さんの腹部を抱きかかえると、路面を思い切り蹴り上げた。  ――跳べ、弱気の障害ハードルを飛び越えろ!  僕は宙に舞い上がった。顔に当たる風の涼しさが、やけに気持ちいい。翼を広げた鳥になったような感覚を覚えた。  路面に着地した瞬間、背後でけたたましい衝撃音が聞こえ、地面が揺れた。  後ろを振り向くと、遠くのほうに鉄骨が歩道に埋まっているのが見えた。八メートルくらい飛んだのだろうか。自分でも信じられないほどの跳躍だった。
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