4人が本棚に入れています
本棚に追加
「冗談言ってんのか?俺は何も変わってない……」
そう言いかけた臣だったが、少なくとも人とは違う何かになってしまったという感覚は確かにあった。
バンドの爆音や観客の大声援よりもクリアーに届くソフィアの声。
さっきまで表情の読めなかったソフィアの満面の笑み。
意識しないと動かない自身の体。
痛くない噛まれた手と、すぐに止まった傷からの血。
そして、噛まれた瞬間失われたかのような五感が徐々に回復していくような不思議な体感。
「臣がそう思うのも無理はないわ。でも、確かに今、貴方の全身はゾンビ菌で満たされているの」
「そんな事あるかよ、ばかばかしい」
臣は多少の怒りを憶えながらも、それでも実際には徐々にその真実を受け入れかけていた。ただ、心のどこかで信じたくなかっただけだ。自分がそんなバケモノになってしまったのだなどとは。
「証拠はあるわ。例えば、ほら」
そう言ってソフィアは臣の鼻と口元に手を当てた。
最初のコメントを投稿しよう!