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こんな説がある。人類は実はミトコンドリアの乗り物でしかないと。ミトコンドリアが自身を維持するために、人間の体を生かしているのだと。
「つまりね、ゾンビ菌は細胞の腐敗を阻害、いや防御って言った方がいいかしら。自らを守るために感染したものの体が腐らないようにしてくれてるのよ」
「それは、本当なのか」
「ううん、これは私の想像。というか、そんな風に感じるのよ。あなたも暫くしてゾンビ菌が体に馴染んでくれば感じると思うわ」
そう言ってから、ソフィアは自身の手のひらを臣の口元まで伸ばした。
「臣は私の感じた通りの人だった。だって今も誰かに感染させたいって本能を、その理性で押さえてるんだもの。ねえ、良かったら私と臣の中のゾンビ菌を合流させてくれる?」
なんのことかと訝しがっている臣の顔を、ソフィアは上目遣いに見つめた。
「私、あなたの事が好きみたい。だから、もしよかったらなんだけど」
ソフィアの頬が紅に染まったのを臣は感じた。
ゾンビのとってお互いの菌を交わらせるのは、人類が愛情をもってその体と体を一つにする行為と同等の意味がある。その事を臣もどこかで理解し始めていた。
この頃には、口では否定しながらも、臣は殆ど今の自分の現状を受け入れていた。そして、交わりたいという衝動もソフィアと同じく感じていた。
「お、俺でいいんなら……」
臣はソフィアの手のひらに歯を立てなかがら、自身の手のひらもソフィアにそっと預けた。
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