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もう、臣にはこれ以上の説明は必要なかった。話しながらも自身の使命じみたものを感じ取っていたからだ。
考えてみればこれは人類にとっては進化みたいなものだ。
まず、人類が追い求めた不老不死が現実のものとなる。何しろ体が老化、腐敗しないで保たれるのだ。それを受け入れない人などほとんどいないだろう。
食を必要としなくなり、動物たちへの残虐な行為や絶滅も防げる。五感を身体で感じないのであれば、地球温暖化問題も解決される。少なくとも人類が原因である二酸化炭素の排出はなくなるに違いない。暖を取ったり涼んだりする必要がなくなり、石油や電気が不要になるからだ。
人口増加問題もなくなる。おそらくはゾンビになどなりたくないという人もいると思われるが、いざ死期が近づけば、自らゾンビになる事を望むに違いなかった。
世界は自然を取り戻し、生きとし生けるものの共存が夢から現実へと変わる。そんな世界のビジョンが臣には浮かんでいた。
「臣が全てを分かってくれているようで良かったわ」
ソフィアにそう言われて、臣は小さく頷いた。
「それじゃあ、始めようか、人類のために」
「「地球のために」」
二人はお互いの意思を確かめ合うと、次々と他の観客たちに歯を立てていった。
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