真の無法地帯

8/22
前へ
/50ページ
次へ
 乗せられたというよりは載せられたと言った方が正しいくらいに、積載重量ギリギリまでゾンビたちを詰め込んだ輸送用ヘリが、そこだけ均されている地に次々と着地していく。  何機ものヘリが地上に降り立ち、次々とゾンビたちが降ろされていく中、臣はその群衆の中にソフィアを探した。彼女は同じヘリには載せられてはいなかったからだ。しかし、いつまで経ってもソフィアを発見することは出来なかった。  元々恋人同士で会ったであろう数組が、お互いの再開を喜び合いながらお互いに噛み合っている。兵士たちはその異様な光景を無言で見ていた。 「こいつら、噛みつく人間がいないからって、お互いに噛みつき合ってるのか」  そう呟いた一人の兵士の声が臣に聞こえた。  ゾンビと言えども、相手の心まで分かるわけではない。相手が口にしようと意識した言葉だけが聞こえるのだ。  それはゾンビ同士でも同様である。頭で考えただけの言葉であれば聞き取ることは出来ない。相手が意識して伝えようとした言葉だけが聞こえるのだ。  だからこそ、臣はすぐにでもソフィアに会いたかった。会ってあの時の想いが真実なのか確かめたかった。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加