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「悪いと思ってるのなら、アーノルドも協力してよね」
「協力?何をだ」
「臣がロシア人女性を探しているらしいの。ええと」
アレサは臣に改めて尋ねた。
「その人の名前とか年齢とか、出来れば特徴も教えてくれないかしら」
それまでの臣だったら、その申し出は丁重に断っていただろう。だが、今の臣は一刻もソフィアに会いたいという想いで頭がいっぱいだった。臣から一通り話を聞くと、アレサは声を高めた。
「ソフィアというロシア人女性を探しています。もし見かけたらこの子に知らせてあげて」
その声に、ある一群が一斉に振り向いた。それはアレサが載っていたヘリにいた群衆だった。
その群衆の視線が臣に向けられ、臣は急に恥ずかしさを憶えた。
「他のヘリは知らないけれど、私たちは機内で一杯話をしたわ。私たちはみんな友達だから心配しないでね。きっとソフィアという娘もすぐに見つかるわよ」
そう言いながらウィンクしてくるアレサを見ながら、この人は凄い人だなと感心していた。
臣の載っていたヘリもそうだが、他の群衆を見ていても分かるように、彼等はヘリの中で一言も発してはいなかったのだ。皆一様に、これから自身の身に何が起こるのか、何をされるのか不安でいっぱいだったからだ。
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