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そして当日、二人は会場の一番後ろにいた。二人とも元来のロック好きではあったが、若者たちの熱狂に押されて、前へと進むのが気恥ずかしかったからだった。
日もすっかり暮れ、会場の盛り上がりも最高潮に達したと思われたその時、普通なら満員電車も真っ青になるくらいに前へ前へと圧し合うはずの観客たちが、徐々に二人の方へと後退ってきた。
何か異変があったに違いないと、ジョージは観客たちの波を掻き分け、中へ中へと進んでいった。アレサも後ろから続いた。
そこで二人は異様な光景を目にする。人が人を捕らえ、肌の露出したところに噛みついていたのだ。二人はすぐに吸血鬼を連想したが、血が目的ではない事はすぐに分かった。奴らは噛みついてはいるが、吸いついてはいないのだ。
警察官でもあるジョージは、電柱と比べても遜色がないほどの太い腕を振り回しながら、その異常者の塊へと歩んでいった。怒りをあらわにし、一人、二人となぎ倒していく。だが、その様子を見てもひるむことなく、異常者たちは次々とジョージへと向かっていった。
ジョージに殴られ数メートル吹っ飛ばされた者たちも、まるで痛みなど感じていないかのように立ち上がり、ジョージへと再び向かっていく。
結局ジョージも数十人の異常者たちに抑え込まれ、肌をむき出しの部分は全て噛みつかれる事となった。
ジョージはすぐに立ち上がり、今度は他の異常者たちと共に観客たちの方へと歩み始めた。この事で、遂に会場内はパニック状態となる。
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