隠蔽された二つの事件

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 知らせを受けてようやく到着した州警察は、逃げ惑う観客たちを誘導したが、すでに観客の半数以上はその餌食となっていた。逃げまどう観客がいなくなったところで出口を封鎖し、警官隊が中へと入っていった。  会場の奥からは、ゆっくりとこちらに向かって歩んでくる群れがはっきりと見て取れた。警官隊の数名が、腰に付けていた特殊なスタンガンを手にその群れに向かって制止を促したが、誰一人止まるものはいない。その光景は、映画の中で群れを成し人々を次々と襲うゾンビそのものだった。  映画と違うのは、その群れからはうめき声はおろか、微かな声さえも発せられていない事と、瞳を除いてその容姿は人そのものであるという事だった。  最前列にいた警官たちが一斉にスタンガンを当てたが、その群れは一向にひるむことはなく、そのままその警官たちに覆いかぶさった。背後に待機していた警官たちは、その光景に恐れをなし、誰からともなく一斉に発砲した。弾に当たった者はその場で倒れたが、それでもしばらくすると再び立ち上がる。そう、やつらには拳銃さえも効かなかったのだ。  残った警官たちも後退りながら発砲を続けるが、その群れの進行を止めることは出来なかった。途中、上司の命令により、まだ会場に数名の警官を残したまま、その出口は完全に封鎖されてしまう。
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