未知のウィルス・2

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 研究員が監視室から出ていくのを確かめてから、スザンナは白衣のポケットに忍ばせていた小箱を取り出しながら、ガラスの壁まで歩み寄った。  ソフィアを見下ろすような格好のまま、スザンナは小箱を開け、例の遺体から取り出した松果体(クリスタル)に人差し指を当てた。 「私の声が聞こえる?」  スザンナが語りかけると、それまで微動だにしなかったソフィアがゆっくりと顔を上げた。  実際に会うのは初めてだった。 「こんにちは。思ったより若い博士で驚いたわ」 「いやだわ、いくつだと思ってたの?ていうか、ソフィアの方が随分と若いじゃない」 「まあ、見た目は、ね」  対面するのはこれが最初だが、簡単な会話はかわしたことがある。そう、スザンナが初めてそのクリスタルに触れたその時のことだ。自己紹介もその時に済ませていたが、込み入った話は直接会ってからという事にして、その場は簡単に済ませていた。 「いやあ、あの時は本当に驚いたわ。コレに触れた瞬間『まだかしら、まだかしら』ってあなたの声が普通に聴こえるんですもの」 「だって、アメリカの最高機密機関で研究されてるんだから、すぐにでも私と会話する方法なんて見付けられると思って」 「それにしたって、あそこからここまで千フィートは離れてるのよ。防音設備だってそんじょそこらのものとは比較にならないし」  この事は、ソフィアの体にそれだけゾンビ菌が馴染んでいるという証明である。限界はあるが、菌が馴染めば馴染むほど、その限界値は上昇するのだ。  ゾンビ同士は意思を飛ばし合う事で会話する。一般的に言われるテレパシーを使うのだが、ソフィアのその送受信範囲は広い。  他のゾンビたちも、馴染んでくればその身体能力は人であった当時以上の力を発揮できるようになるのだが、それはまだ先の事である。
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