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「蛇足」の故事なら、誰もが知っている。
大昔の中国で、あまりに絵を描くのが早く、蛇の絵に余計な足を描いたばかりに失格になってしまった男の話。
その男が今、現代の日本に転生した。
当時の恨みを胸に抱えたまま。
―――――
僕とその男が出会ったのが、偶然だったかどうかは分からない。
車椅子でとぼとぼと道を移動する僕の前に、絵描き道具を抱えた彼が突然立ちはだかったのだ。
彼は半ば強引に、僕の絵を描かせてほしいと言った。時間は取らせないから、と。
実際彼は、僕があっけに取られている間に絵を一枚素早く描き上げてしまった。
それはとても写実的な絵だったが、一つだけ現実との違いがあった。
それは足だ。数年前に交通事故で両足を失った僕だったが、その絵の中の僕には両足がしっかりと生えていた。
するとどうだろう。失ったはずの両足が、その場でみるみるうちに復活したのだ。
これが夢でないと分かった瞬間、僕は感涙に震えた。
僕は元陸上選手だったのだ。事故で両足を失い、生きる希望も失ったと思っていた。それが今、再び自分の両足で立つことができる。
あまりの喜びに、僕は思わずその場で走り出しそうになった。
そしてその絵描きに僕は激しく感謝した。いや、いくら感謝してもしきれない、少なくとも一生感謝し続ける、できることは何でもすると僕はその場で彼に誓ったのだった。
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