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「別れたいの」
そう言ってきた彼女の言葉を飲み込めずに、俺は何度も彼女に会いに行った。
何度も何度も何度も何度も何度も…。
そして、その度に、彼女は激しく怒るようになっていった。
「もうつきまとわないで!警察に話したんだから!!ほんっとにもう好きじゃないの。怖いのよ、あなたが。心底怖いの。やめて…もうやめて…だからねぇ、もう来ないで。お願いよ」
そして、泣きじゃくった。
だから、俺は、人形を造り、『死んでください』と全身に書いて、彼女がよくデートの時に着ていた赤いコートを着せ黒いパンプスを履かせた。それから丑の刻参りを、一か月もの間、続けたんだ。
そうしたら、君との辛い記憶は全て消えた。
俺はまた幸せになった。
そうか、こうやって会いに来てくれたんだね。全てを思い出しても、俺が寂しくないようにって…。
野上は勢いよく体を起こし死体に近づくと、その体を抱きしめた。
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