幼馴染で両思いなのに運命の番じゃないわけがないだろ?

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 ◆ ◆ ◆ 「よ、八葉」  予備校を終え、扉を潜ればそこには見慣れた男がいた。  凡そ予備校生たちとは掛け離れた派手な装いのその男は、俺の顔を見るなりこちらへと駆け寄ってくる。  ――賀茂だ。 「……賀茂君、また待っててくれたんだ」 「そりゃそうだろ。こんな夜道に一人で帰らせるわけないだろ」  そう賀茂は俺の腰に手を回してくる。 「……っ、賀茂君……」 「その首輪、似合ってる。やっぱり八葉は肌が白いから黒が映えんな」 「……ん……ッ」  腰を抱き寄せられ、耳元で囁かれる。それだけで昼間校内で散々賀茂に犯されたときの感覚が蘇ってくるのだ。 「なあ、これから俺んちくるだろ? オバサンには俺から連絡しとくし、それに……そろそろだろ? ヒート」 「……うん、一応予定日は明日になってるはずだけど」 「なら丁度良いな。明日から連休だし、ずっと一緒にいような」  人目を憚ることなどしない。  あんなに鬱陶しかった男が、今では大きな犬のように見えるのだ。――発情期の盛り付いた犬だ。  だったら、宛ら俺は――。 「うん、……俺も賀茂君と一緒がいい」  軽く唇を重ね合わせ、俺達は笑い合う。  両親は俺がΩになったと聞くと落胆した。それと同時に、『道理で』と口を合わせたのだ。  ――道理で、不出来なのだと。  俺は今度はショックを受けることはなかった。寧ろ清々した。もう必死に自分を削ってまでしがみつかなくてもいいのだと、これからは自分のことだけを考えていいのだと。  それでも、勉強以外の趣味はなかったので予備校には通い続けてる。行きたい大学に受かることは諦めきれなかったからだ。  けれどそれ以外、勉強を詰め込む代わりに俺は賀茂と過ごすことが多くなった。賀茂の好意を素直に受け止めきれるようになってからは、人から必要とされることで自分を保つことができたからだ。  依存対象が両親から賀茂に変わっただけでないか。そんな風に考えたこともあったが、もうどうだっていい。だって、賀茂は俺のことを邪険にしないし好きだって言ってくれるしたくさん愛を注いでくれるから。  ……これでよかったのだ。  END
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