第一章『居場所』

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第一章『居場所』

 今、俺は己の人生の分岐点に差し掛かっていた。高校ニ年、現役で進行形のイジメという青春を謳歌(おうか)している。この広い校内には心が休まる居場所のような所は存在しない。  そして、今日も学校の屋上から身を投げだそうとする。いや、今日に限った話だけではない。今まで何回かこの場面になってきた。そしていつも、あと一歩……、あと一歩の所で()みとどまる。  無理だ……、どうしてもこの一歩……、この一歩を踏み出す勇気が俺にはない。  これで何度目だろうか。いつもここから一歩、足を出すことができない。夢の中だとひらひらと(ちゅう)を気持ちよく()える空気は、どうして現実ではこんなにも重いのか……。  つくづく自分に嫌気がさし、帰ろうと思い、靴箱を確認する。そして俺は安堵した。今日は靴には何も入れられてない。たいてい俺が帰る頃を見計らって靴の先端に画鋲(がびょう)などが忍ばせてある事がある。  毎日こんな感じで一喜一憂(いっきいちゆう)する日々を迎えていた。さすがのアイツらも終業式の日にはしないか。  夏の始まり、皆は歓喜極まる時期だろうが、俺にとってはどこか虚無感(きょむかん)(いだ)いていた。家に帰り、早くもこの『夏休み』というイベントの終了に絶望していた。  そして、自分はなんの為に生きているのだろうと下らない意味を頭の中で探りまわしていた。  (しばら)く、ぼーと部屋の天井を眺め、(まぶた)を開けたり閉じたりしてこれからの現実を想像していた。 「はぁ…… 」と溜息と共にふと、楽に死ねる方法を調べてみよう、と妙な感情を()いてしまい、PCを取り出した。久しぶりに使用するので画面やキーボードには(ほこり)がかぶってた。  除菌シートで多少綺麗にするとPCの電源を入れた。「えっと……、楽に死ねる方法……」と俺は小声で言い、キーボードをたたく。  だが、やはりポピュラーなものばかりしか検索されない。首吊りは上手くいけば一瞬で落ちるらしいが失敗したらかなりの苦しみを(しいた)げられ死ぬらしい。  飛び降り、電車への飛び出し、リストカット、怖くてできない。  睡眠薬の多量服用(たじゅうふくよう)、これは楽そうと思ったが、致死量までにはかなりの量が必要らしい。手に入れるのも難しいし、恐らく飲んでる途中で普通に寝てしまう。 「え?」  そこで俺は声を上げた。『安楽死』というワードからウェブサイトを転々としていたら気になるタイトルのサイトを見つけたから。  自殺村?  ホームページに(もぐ)るとそこには遊園地のマスコットのようなかわいいクマのキャラが背景に、文字も少しゆるい感じのフォントだったが、こうも書かれていた。 『人生最期の場所はどこがいいですか?』  その一文で俺は息を呑んだ。自分の最期の場所など考えた事などなかったから。確かに海外の一部では安楽死を幇助(ほうじょ)する団体もあると何かで見たことがある。しかし、人の死のことだ。審査も厳しいらしい。俺みたいなイジメごときではまず通らない。
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