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この自殺村って……、いやいやバカらしい、とPCを閉じようとしたが、もしかしらという気持ちもあり、応募ページの項目から、気が付けば俺はエントリーしてしまった。どこか焦燥感のようなものを抱いてしまったのだろう。ここで、もしこれが本当なら…… 、と自分の浅い人生を小さく振り返る。その振り返った先に俺は何も感じなかった。恐らくこれからの人生でも、俺は何も得ないし失わないだろう、そう決め付けて決意を込めた。
そして、次の日の朝の事。登録した電話番号に電話が掛かってきた。知らない番号からだっだ。もしかして、と思い俺は電話に出る。
「もしもし」
「あっ、もしもし! 沢辺様でお間違いないでしょうか?」
「はい」
「こちら自殺村の役員を勤めさせております、夜川と申します。本日はエントリーして頂き誠にありがとうございます!」
恐らく驚くところではあるんだろうが、相手の声がまるでヒーローショーのアナウンスのような元気でハキハキとした女性の声だったのでこちらも自然と緊張感がなくなる。
「あっ……、えっと……?」
「沢辺様は志願者という事になりますが、お間違いございませんか?」
「……はい」
「そうしましたら、一度こちらの方にお越し頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
グイグイと話の展開が繰り広がるが、俺はなんだか時間が空けば決意が鈍りそうな気がして即座に返事をしてしまった。
「わかりました。それって今からでも大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。では住所の方お伝えしますね!」
俺が住所を控え終わると夜川という女性は「それでは沢辺様、お気をつけてお越し下さい。お待ちしておりますね!」と言って電話が切れた。
俺は早速準備をし、親にバレないようにこっそりと家を出た。親か……、と一瞬、躊躇したが、かぶりを振り、淡々と最寄りの駅へ向かう。
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