562人が本棚に入れています
本棚に追加
恋愛マニュアルを作ってくれた三人――ヴェサリス、マッコンエル、オルランジェに、失態を重ねてしまったことを正直に打ち明ける。
オルランジェは「まぁ!」と驚いた様子で口元を両手で覆うと、瞳をきらきらと輝かせた。
「品行方正なアル様が女の子をからかうなんて! キャ〜、初めて聞いたわ! 失敗なんかじゃない。むしろ上出来よ!」
「アル王子の笑顔を引き出すなんて、すごいじゃん!」
「全然そんな……。わたし緊張してしまって、うまく話せませんでした。もっとちゃんとできるよう、頑張ります。完璧な女性になれるよう、精一杯努力します。ですからどうか、ご指導お願いします!!」
「なにか勘違いしているようですね」
深々と下げた頭の上に、ヴェサリスの声が降ってくる。
「勘違い?」
「そうです。完璧な彼女役など誰も求めていません。わたしたちが求めているのは、アルオニア様を笑顔にしてくれる方。リルエさんは、真面目さが裏目に出ているようです。うまくやろうとして肩に力が入り、それがミスを誘うのでしょう。緊張したときは深呼吸をしてください。自然体でいたほうがうまくいきますよ」
「そうそう! 完璧になろうとしなくていいんだ。アル王子の性格的に、そういう女性って息が詰まると思うからさ。思わず手を差し伸べたくなるぐらいの、危なっかしいリルエちゃんでいてよ」
「マッコンエルさん、ヴェサリスさん、オルランジェさん。励ましてくださってありがとうございます! 元気がでました!」
「ふふっ。恋愛マニュアルその一、成功ね!」
オルランジェが人懐っこい笑顔で、手を叩いてくれた。
三人に出会えた喜びで胸がいっぱいになっていると、ヴェサリスは二つ折りの紙をわたしに差し出した。
「マニュアルその二です」
【恋愛マニュアルその二。自分のことを知ってもらう(家族を紹介しちゃおう! リルエちゃん、頑張って😘)】
マニュアル内容に、目が点になる。
マッコンエルが両手を頭の後ろで組んで、口笛を吹いた。
「ぴゅ〜ぅ。リルエちゃんは今度はどんなドジを披露するんだろうな。楽しみだ」
「アル様は、どのようなドキドキなことをしてくれるのかしら。ワクワク」
マッコンエルとオルランジェのはしゃいだ声を聞きながら、わたしは(この人たち、絶対におもしろがっている……)と遠い目になったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!