二章 恋人役のお仕事

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 恋愛マニュアルを作ってくれた三人――ヴェサリス、マッコンエル、オルランジェに、失態を重ねてしまったことを正直に打ち明ける。  オルランジェは「まぁ!」と驚いた様子で口元を両手で覆うと、瞳をきらきらと輝かせた。 「品行方正なアル様が女の子をからかうなんて! キャ〜、初めて聞いたわ! 失敗なんかじゃない。むしろ上出来よ!」 「アル王子の笑顔を引き出すなんて、すごいじゃん!」 「全然そんな……。わたし緊張してしまって、うまく話せませんでした。もっとちゃんとできるよう、頑張ります。完璧な女性になれるよう、精一杯努力します。ですからどうか、ご指導お願いします!!」 「なにか勘違いしているようですね」  深々と下げた頭の上に、ヴェサリスの声が降ってくる。 「勘違い?」 「そうです。完璧な彼女役など誰も求めていません。わたしたちが求めているのは、アルオニア様を笑顔にしてくれる方。リルエさんは、真面目さが裏目に出ているようです。うまくやろうとして肩に力が入り、それがミスを誘うのでしょう。緊張したときは深呼吸をしてください。自然体でいたほうがうまくいきますよ」 「そうそう! 完璧になろうとしなくていいんだ。アル王子の性格的に、そういう女性って息が詰まると思うからさ。思わず手を差し伸べたくなるぐらいの、危なっかしいリルエちゃんでいてよ」 「マッコンエルさん、ヴェサリスさん、オルランジェさん。励ましてくださってありがとうございます! 元気がでました!」 「ふふっ。恋愛マニュアルその一、成功ね!」  オルランジェが人懐っこい笑顔で、手を叩いてくれた。  三人に出会えた喜びで胸がいっぱいになっていると、ヴェサリスは二つ折りの紙をわたしに差し出した。 「マニュアルその二です」 【恋愛マニュアルその二。自分のことを知ってもらう(家族を紹介しちゃおう! リルエちゃん、頑張って😘)】  マニュアル内容に、目が点になる。  マッコンエルが両手を頭の後ろで組んで、口笛を吹いた。 「ぴゅ〜ぅ。リルエちゃんは今度はどんなドジを披露するんだろうな。楽しみだ」 「アル様は、どのようなドキドキなことをしてくれるのかしら。ワクワク」  マッコンエルとオルランジェのはしゃいだ声を聞きながら、わたしは(この人たち、絶対におもしろがっている……)と遠い目になったのだった。
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