二章 恋人役のお仕事

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 ヴェリサスとマッコンエルとオルランジェに、デートの誘いを成功したことを報告すると、手放しで喜んでくれた。  マッコンエルはにやけながら、当然といったていで言った。 「王子。リルエちゃんのこと、気に入っているもんな。うまくいくと思っていた」 「気に入っている? そんなことないと思いますが……」 「えぇっ⁉︎ リルエちゃんってば、鈍感! アル王子は軽薄な人じゃないよ。むしろ、重すぎる!」 「そうそう、マッコンエルとは違ってね」 「俺の話はいいから!」  オルランジェに小突かれて、マッコンエルは焦った顔をした。  二人のやり取りに笑っていると、ヴェサリスに話しかけられた。 「リルエさんは、自分に自信がないようですね。リルエさんに必要なのは、成功体験なのだと思います。アルオニア様はあなたに寛容ですし、わたくしたちもできる限りフォローします。ですから、失敗を恐れずに行動していきましょう。もしそれで失敗したとしても、立て直すことができれば、それもまた自信に繋がります。リルエさんは、できない人間ではありません。人を見る目に自信があるわたくしが言うのですから、間違いありません」 「ヴェサリスさん!」  思いがけない褒め言葉に涙目になっていると、オルランジェが自分の二の腕をパンっと叩いた。 「デートの服装とメイクは私に任せてちょうだい。大変身しましょうね!」 「はい! ありがとうございます」  服装やメイクのことにまで頭が回っていなかった。  オルランジェの申し出がとてもありがたくて、わたしは深々と頭を下げたのだった。  ◆◆◆  デート当日の朝。  メイド長であるオルランジェと若いメイドのジュリアの手によって、着せ替え人形のように目まぐるしくドレスをあてがわれる。 「や〜ん。リルエちゃんって、色白でお肌すべすべ。若いっていいわぁ。なんでも似合っちゃう!」 「リルエさんは清楚ですから、淡い色合いのドレスの方が純真さが引き立ちそうです」 「そうね! 甘いテイストのピンクのドレスはどうかしら?」 「今日のアルオニア様の服装を確認したところ……」  ジュリアはオルランジェの耳元でこそっと囁いた。 「アル様がそれなら、リルエちゃんも……ね!」 「なんですか?」  気になって問いかけるも、オルランジェは笑うばかりで答えてくれない。 「ドレスは決まったわ。次はメイクね。ジュリアは髪をお願い」  オルランジェに血行が良くなるというクリームで顔をマッサージしてもらってから、お化粧を施される。  オルランジェは器用な手つきで、眉毛を整えるブラシや、ローズピンクのチークや、マスカラを使いこなしていく。白粉の芳しい花の香りに、ドキドキする。  ジュリアは、カーラーをいくつも使って髪を巻いていく。ドライヤーを当てた後にカーラーを外すと、毛先がくるんと巻かれてあって驚いてしまう。 「二人ともすごいです! 魔法使いみたい!」 「ふふっ。私たちは今ね、綺麗になる魔法をかけているの。アル様、絶対に驚くわ!」  すべての支度を終えて、わたしはようやく鏡の中の自分を見ることができた。
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