四章 永遠の恋人

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 シェリアは、ドアの向こうに見える顔がガーネットであることに警戒心を解くと、すぐさまドアチェーンを外した。 「あなた、どうしたの?」 「あ、あの、話があって……」  緊張を解いたシェリアとは反対に、ガーネットは強張った面持ちで廊下に突っ立っている。ガーネットはスカートを握りしめ、シェリアと目を合わせようとしない。  シェリアが口を開くよりも早く、男たちが部屋になだれ込んできた。  五人いる男たちの中には、マッコンエルとヴェサリスがいる。そして、アルオニア王子の姿も——。 「なんなのっ⁉︎」  驚いたシェリアの手からナイフが滑り落ちる。  アルオニア王子は、タトゥーの入った男に羽交い締めにされているわたしを見るや否や、怒りに顔を歪ませた。 「今すぐにリルエを離せっ!!」 「はんっ!!」  タトゥーの男はわたしをさらにきつく拘束すると、せせら笑った。 「王子様の登場ってわけか! いいねぇ。燃えるぜ!!」  男の片腕がわたしの首に当てられ、力任せに締めつけられる。首が圧迫され、息をするのが苦しい。 「リルエっ!!」 「来るなっ! 一歩でも近寄ったら、あんたのお姫様の首が折れるかもしれないぜ」  男の片腕がわたしの首に巻かれたことで、右腕が自由に動かせるようになった。自由になった右手で男の腕を引き剥がそうとしたが、太く逞しい腕はびくともしない。  ダメかもしれない。一瞬弱気になったものの、すぐに自分を鼓舞する。    ——絶対に諦めない。こんなことで、アルオニア様と離れたくない。  わたしはハイヒールを履いた足で、力いっぱいに男の素足を踏んだ。同時に、男の腹に右肘を思いっきり突き入れる。  男は「うっ!」と低く唸ると、体を折り曲げた。腕の力が緩む。 「リルエ、しゃがんでっ!!」  王子の指示が飛び、わたしは即座にしゃがんだ。  王子は一瞬にして間合いを詰めると、男の顔を殴った。よろめいた男の腕を捻りあげ、いとも簡単に床に叩きつけた。  マッコンエルが拍手する。 「リルエちゃん、やるぅー! そして、さすがはアル王子。お強い。こっちの男も倒しましたので、任務完了です」  見ると、ガムを噛んでいた男は泡を吹いて気絶している。  王子は素っ気なく言った。 「連れて行け」 「了解。事情を吐かせ、それなりの対応をします」 「くそっ!」  タトゥーの男は王子の従者に後ろ手に拘束されてもなお、暴れた。けれど従者は、抵抗する男を難なく部屋の外へと連れ出した。  マッコンエルは気絶しているガム男をヒョイっと抱えると、わたしに向かってウインクし、部屋から出ていった。
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