恋人であるということ

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もっとナオくんに触れて欲しいだけなのに。 ナオくんだって、私のことを求めてくれているように見えるのに。 なのに、なんでそんなに私のことを拒絶するんだろう。 理由を一生懸命考えてみても、思い当たる節なんか見つからなくて。 またさっきみたいにリビングのソファーの上で体育座りをしながら、 「うぅ……ふえぇ……ぐすっ」 抱えた膝に顔を埋めてめそめそと泣いた。 どのくらいの時間そうしていたのかは分からないけど、 「えっ? ゆづ? どうした!?」 いつの間にかお風呂から上がっていたナオくんが、泣いている私を見て慌てて歩み寄ってきた。 「……」 事情が事情なだけに言いたくなくて、私は無言のまま膝に顔を埋め続ける。 私からはナオくんの姿は見えないけど、私の隣にナオくんが腰を下ろしたのが気配で分かった。 「言ってくんなきゃ分かんねぇだろ」 ナオくんの困り果てた声が聞こえてきて、 「……それはこっちの台詞だもん」 涙と鼻水でくぐもってしまった声で、反論した。 「なんで……私のこと抱いてくれなくなったの?」 半ばヤケクソでストレートに訊ねると、 「……」 ナオくんは、やっぱり黙ってしまう。
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