恋人であるということ

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何か言ってくれないと、私の中にも一応は存在している女のプライドというものが、傷付いてしまうではないか。 「やっぱり……桃子さんみたいな爆乳じゃないと物足りない……?」 私が周りから『男たらし』だと噂される所以(ゆえん)は、実は平均よりもそこそこある胸のせいだったりもするので、そこは割と自信のある部位だったけれど。 流石に桃子さんと比べられると辛いものしかない。 「はぁ!? なんで今その名前が出てくんの!?」 心底意外だったのか、ナオくんが咄嗟(とっさ)に出した声はとても大きかった。 恐る恐るナオくんの目をちらりと見ると、呆れた眼差しを向けられていて。 「前にも言っただろ……俺はもう、ゆづにしか反応出来ないって」 そして、とてもとても気まずそうに、また私から視線を逸らした。 「ゆづに対して不満があるとか、そういうんじゃない」 「じゃあ、なんで……?」 ぼろぼろと溢れて止まらない涙を必死に両手の甲で拭いながらもう一度訊ねると、ナオくんはとても悲しそうな眼差しを私の方へと向ける。 「……ゆづを泣かせたくなくて」 「……もう既にめっちゃ泣かされてるんですけど」 この涙でぐちゃぐちゃな私の顔を見てよくそんなことが言えたなぁ、とある意味尊敬してしまう。
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