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「前にゆづを抱いた時……ずっと痛そうに泣いてたから」
またナオくんの視線が下に下がる。
膝の上に置いた自分の握り拳を見つめながら、
「またゆづに痛い思いをさせたらって思うと……ゆづに触れるのすらも、何か怖くて」
ナオくんはとても悲しそうな声を出す。
「それでまたゆづが俺の傍からいなくなるくらいなら……俺が我慢し続ける方を選ぶ」
……この人は、本当に……
「やっぱり、ナオくんは私の気持ち、全然分かってくれてない」
「えっ」
私に上目遣いで睨まれたナオくんの体が、分かりやすいくらいにびくっと震えた。
「折角ナオくんと付き合えたのに。もっといっぱいナオくんに触れて欲しい」
彼女にこんな恥ずかしいことを言わせるなんて。
ナオくんは、なんて罪な人なのだろう。
「……またゆづの痛がることをするかもしれないのに、いいの?」
ナオくんの両手が、私の顔を優しく挟むようにして頬に添えられる。
不安そうに私の目を覗き込むナオくんの瞳を、
「慣れるまでは痛いって聞いてるから、覚悟はしてるもん」
私は強く睨み返した。
「……ベッド、行こっか」
私の顔からそっと手を離したナオくんは、今度は指を絡めるようにして私と手を繋ぐ。
ナオくんと手を繋いだのは子供の頃以来だけれど、恋人繋ぎをしたのはこれが初めてだった。
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