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「お邪魔します……」
案内された部屋に恐る恐る上がる。
実は、ナオくんの部屋に上げてもらうのはこれが初めて。
1LDKの綺麗に整頓された室内は、几帳面な性格のナオくんらしく全然散らかっていなくて。
部屋自体に物は少なく、最低限の家具と私物が少し見えるくらいで、いかにも男の人の部屋って感じがした。
唯一、物で溢れているのはキッチン。
見たこともないような調理機器や器具が所狭しと並んでいて、殺風景な部屋の中でそこだけが浮いて見えた。
とは言っても、きちんと整頓されていて、やっぱり料理人って感じのする綺麗なキッチンだ。
「……あんまりじろじろ見んなよ」
珍しく恥ずかしそうな表情を見せるナオくんに、思わず胸がキュンとなる。
「この部屋には、まだ誰も入れたことなかったから、色々と片付けてねぇし」
言いながら手にしていた鞄をテレビ台の隣に置くナオくん。
……なるほど、そこが定位置なのね。
適当にソファーの上に放り投げたりしないところが、ナオくんらしいと思う。
「誰もって……彼女とかは?」
ナオくんに彼女がいるなんて話は聞いたことがなかったけど、私が知らないだけかもしれないし。
ナオくんとは幼なじみと言えど、彼が実家を離れてから今までの4年間は疎遠になっていたので、知らないことも多いかもしれない。
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