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プロローグ
「カズー!早くしろー!もう行くぞ!」
「はいはい。ちょっと待てよ」
帰りのHRが終わり、教室内も廊下も慌ただしく騒がしい。
そんな時にドアから窓際のカズに向かって呼びかける。
いつものことだ。
「いやー、受験も終わったし、授業もないし、中3って楽だなー」
「俺は卒業式の練習がめんどくさくてたまんないけど」
「それはわかる」
他愛もない話をしながら、家までの道を俺は少しゆっくり歩く。
家が隣で、保育園が同じだった俺たちは、親が意気投合したのもあり、ずっと一緒に育ってきた。
そんな兄弟みたいな幼なじみのことを、俺は恋愛的な意味で好きだ。
だから、2人きりのこの時間を少しでも長引かせたい。
そんな事を思ってたら、もう家に着いていた。
ほんと、楽しい時間は早く過ぎる。
「じゃあ、また明日な」
「じゃな!」
それでも少しほわほわした気持ちで家に入ると、忙しそうな母が姿を見せた。
「ごめーん!ちょっとおつかい頼まれてくんない?今、手離せないのよ〜」
「ええ〜?いいけどー。何買ってくればいい?」
「ここに書いてあるやつ!はい、これお財布ね!よろしく!」
そう言って俺の手にメモと財布を握らせて部屋の中に戻っていく。
めんどくさい気持ちはやまやまだけど、引き受けてしまったものはしょうがないと、荷物を玄関に置いて家を出る。
そこそこの量の買い物を終え、帰路に着く。
信号を待ちながら、今日のカズを思い返す。
今日は寝癖がついてたり、眠そうだったりしてちょっと幼かったな。
俺よりも顔は整ってるのに、無頓着な部分があって、見た目とかあんま気にしないんだよな。
とか、考えてたら反対側にカズがいる。
俺が声をかけると、カズは振り向いたと思ったら俺に叫んだ。
「しょう!危ない!逃げろ!」
何?と思った時には俺の体は衝撃につつまれていた。
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