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第1章 俺が俺じゃない
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
規則的な電子音が俺の頭に鳴り響く。
うるさい。この音なんだ?
その音の正体を確かめようとして、ゆっくりと目を開く。
そこには真っ白の壁と天井があった。
俺がよく状況を理解出来ないでいると、横からガタッと言う音が聞こえた。
「翔!目が覚めたのね!良かった!あなた3日も眠ってたのよ。起きないんじゃないかと思ったんだから!」
「え、えっと…」
そう言って抱きしめられる。
誰だろう。この人。
見覚えのない女の人に抱きしめられたことで、俺の脳は混乱を極める。
「ああ、今お医者さんを呼ぶから。ちょっと待ってて」
女性がナースコールをしている間、その人をじっと観察する。
でも、やっぱり見たことない。
「ああ、本当に目を覚まして良かった。お母さん、心配したのよ」
「…おかあさん?」
何を言ってるんだろう。
俺の母親はこんな人じゃない。
ちゃんと顔を思い出せるし、記憶喪失とかじゃないはずなのに。
「そうよ。どうしたの?何かあった?」
「い、いや、えっと俺の名前なんだっけ」
「名前?そりゃあなた…」
「佐々木さん!おまたせしました!」
「ああ、ご苦労さまです」
ちょうど医者が来て、名前を教えてもらうことは出来なかった。
でも、ササキ?
俺の名字はササキじゃない。松浦だ。
松浦勝。それが俺の名前。
なんか、おかしい。
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