第1章 俺が俺じゃない

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診察は特に大きな異常もなくすぐに終わった。 「翔。あなた、明後日もっと詳しい検査して異常がなかったら退院ですって。良かったわね。入学式間に合いそうで」 「入学式?高校の?」 「そうよ。私立朝日山高校。頑張って勉強してたじゃない」 朝日山高校…。俺が行く予定だったとこだ。 てことは、カズにもまた会えたりすんのかな。 「卒業式は出る?もし無理そうだったら休んでもいいわよ」 「いや、出るよ」 「そう。じゃあ、お母さん帰るわね。また明日来るから」 そう言って俺の母親(仮)は病室を出ていく。 俺は少し落ち着いた頭で周りを見渡す。 俺の部屋は個室で広すぎるくらいの部屋だった。 ベッド横のテーブルには、見舞い品であろう果物と手紙、寄せ書きなんかも沢山置いてある。 ──────人気者だったんかな。 「『佐々木翔』ってどんな奴だったんだろ」 この体の持ち主であろう佐々木は、寄せ書きを見るに良い奴でいろんなやつから好かれているっぽい。 親の服がいい物だったし、お金持ってる家の子供か? ぐるぐるといろんなことを考えても、分からないことは分からない。 「そういえば、俺どんな見た目してんだろ」 思春期の男子としては、仮とはいえ、自分の見た目は気になって、近くに置いてあったスマホで見てみる。 「おお、美少年…」 そこには白い肌に大きな目、サラサラの髪を持ったイケメンがいた。 元の俺とは似ても似つかないな。
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