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「ねぇ!待って!佐伯!」
「…俺?」
久しぶりに見たカズは相変わらずの塩対応で、面倒くさそうに振り返った。
「そう!なぁ、一緒に帰ってもいいか?」
「…いいけど。なんで?」
「なんでって…。席前後だし!仲良くしよ」
カズは訝しげな目で俺を見てきたが、一緒に帰ることは了承してくれた。
校門を出て最寄り駅までの間で俺らはそこそこ仲良くなれた。
と言っても、俺が一方的に話してるだけではあったけど。
それでもカズが電車を降りる時、笑ってくれただけで俺の心は満たされたのだった。
このまま勝の時のように仲のいい友達になりたい。
恋人、にもなりたいけどこの姿でなるのはちょっと悔しい。
とりあえず明日からもバンバン話しかける!
そう決意しながら今の俺の家に帰る。
「ただいま」
「おかえり、翔。入学式お疲れ様。これからクッキーを焼くの。出来たら呼ぶからそれまでゆっくりしててね」
「うん。ありがとう」
佐々木翔の家はお金持ちだ。
退院して、ここがあなたのおうちよ、と連れられた時はびっくりした。
広すぎる部屋とプール付きの庭、大理石のお風呂とまるで漫画の世界だった。
それでもお手伝いさん的な人は居らず、家事は母が全部こなしている。
ふわふわ、おっとりしているように見えるがすごい人だ。
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