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動き出す
はじめて二人に会ったとき、僕はどんな顔をしていたのだろう? あまりに近い存在でそんなことすら思い出せない。腐れ縁と言うならばそれまでなのだろうけど、その腐れ縁がどこまで続くかなんて僕ら三人のうち誰にも分かりはしないんだ。
「えーー!? また宿題やってないの!?」
由佳に頭を下げる僕。その横で美優も頭を下げる。
「美優までやってないの!? 拓人だけでもうんざりなのに!?」
「いやさ。ほら昨日のドラマが気になっちゃってね?」
「私も見てたけど宿題やってたからね! 拓人は何でよ?」
「ほら。ゲーム進めなきゃ話題に乗り遅れるじゃんね? 優先順位ってやつ?」
「なんで宿題の優先順位が落ちてんのよ!」
由佳は文句を言いつつ僕と美優に宿題を写させてくれる。ガミガミとうるさいが何気に優しいのだ。
「てか由佳、宿題忘れたことないよね? 僕たち、どちらかと言うと問題児扱いなのにさ?」
「それは拓人だけだ!」
なぜか美優にそんなことを言われた。
「仕方ないでしょ……。拓人がほぼ毎日宿題忘れるし、私がやっておかないと困るでしょ? 拓人は問題児だし」
何気に毒を吐いてくる。
「本当感謝してるよ」
「うるさい。早く書け」
毎日僕ら三人こんな感じでいるものだから、僕はクラスメイトから両手に花とか言われるのだけど、その花は猛毒を持っているとも言われている。さらには僕は猛毒に耐性があるそうなのだ。
どのくらいの猛毒なのか、ほぼ毎日つるんでいる僕には想像もつかないが、男子連中に言わせると即死確定の猛毒なのだそうだ。流石に失礼だ。
「そうそう。拓人、バレンタインは板チョコでいいよね?」
美優が宿題を写し終えて当たり前のように呟いた。
「それしかくれたことないじゃんね?」
「あ、じゃあ私も板チョコにする。お返し楽でしょ?」
「由佳だって板チョコしかくれたことないじゃんね? それ以外なんてことあるの?」
「うーん。そうね。拓人がイケメンになったらありかな?」
「由佳、それはない。だって拓人だよ? 誇り高き問題児なんだよ?」
「美優、大丈夫だよ。期待なんかしてないから」
「二人とも僕を何だと思っているの?」
あと二年もすれば僕らは中学生になる。それははるか先のようですぐに来るような気もする。ただ、今が楽しいのだけは事実だ。
四年生の三学期。僕ら三人は無敵なんだ。
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