人の縁というものは。

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「来年、地区別対抗市内一周元旦駅伝ていうのがあるんだけど、アンカーがなかなか見つからないの。陸ちゃん凄く早かったから出て欲しいなと思って」 何を言ってるんだ! 俺は中学2年からいろんなことがあって教室にも行かなくなって結局、高校受験もしないまま、今はペンキ職人になっている身だぞ。 あの頃みたいに、陸上に何もかも捧げていた時の俺じゃないんだよ。 そんな苦い思いが一瞬で俺の頭を駆け巡った。 「おばさん、俺、今、全然走ってないんすよ。中2でやめちゃったから」 おばさんは、ちょっと気まずそうな顔をしたあと「それは知ってるけど、練習して走ってもらえないかな?おばさん、体育振興会の役員をやってるんだけど選手がなかなか見つからないの」 おばさんは情に訴えてきた。 和也んちには、よく遊びに行ってたし、おばさんには、いつも優しくしてもらっていた。 おばさんは「仕事中だろうから、考えておいてね。お願い陸ちゃん様」なんて言いながら帰って行ったけど…どうしよう?
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