3人が本棚に入れています
本棚に追加
夕陽も落ちかけ、もうほんのり薄暗いグラウンドの上。部活動を行う生徒もいない中、たった2人の男子生徒が、トラックを駆けている。
「蓮くん!もう時間だよ!今日は終わり!」
「おー!最後に一本だけやろうぜ!」
「もー、本当に最後だよー」
陸上部の短距離で一位二位を争う蓮と昂太は、明日行われる運動会の組対抗リレーのために、毎日居残り練習を行っていた。
二人はそれぞれ、赤組と白組のアンカーを任されており、実質、どちらの組が勝つかは、二人に懸かっていた。
「やばい!あと二分で最終下校時間だ!」
「だからもう終わろうって言ったのにー」
慌てて学生服に着替えた二人は、疲れ切った足を必死で動かしながら、校門に向かう。
「はい、十、九、八・・・」
校門では、生徒指導担当であり、陸上部の顧問でもある大村先生が秒読みを始めている。
「ギリギリセーフ! はぁ…はぁ…」
二人はなんとか、大村先生が秒読みを終える前に校門を駆け抜けた。
「よし、今日もセーフだな。ご苦労だなー、こんな時間まで練習とは」
「そりゃー俺ら三年にとっちゃ、最後の運動会ですからね!負けるわけにはいかないっすよ!」
「青春はいいね〜。まあ、俺もお前らのどっちが勝つか楽しみだよ、明日は頑張ってな」
「はい、先生さようなら〜」
二人は大村先生に軽く会釈すると、並んで校門を後にした。
「いよいよ明日だな!本番!」
蓮は楽しみで仕方がないといった表情で昂太に話しかける。
「うん、そうだね。それにしても本当に蓮くんは燃えてるんだね。毎日こんな時間まで練習するなんて」
「まあな。てか、昂太だって、毎日俺と一緒に練習してたじゃねーか!」
「僕は…蓮くんと一緒にいると楽しいからさ」
昂太は、すっかり暗くなった空を見上げながら言う。
「ま、僕も負けたくないしね」
「おう!俺だって負けねーぞ!」
二人は拳を突き合わせる。
最初のコメントを投稿しよう!