1人が本棚に入れています
本棚に追加
* ノーブレーキ・ノープラン *
***
いつもの時刻。いつもの車両。
今日も私の視界に先輩が入る。
だけど、きっと。先輩の視界に私は一切入っていない。
その事実が、少し寂しい。
そう自覚した時には、この恋は走り出していた。
気付けば、先輩に声を掛けていた。
「先輩……っ!」
「……え、と?」
怪訝な表情を浮かべつつ、にこやかに応答する先輩は明らかに困惑している。
だけど、先輩以上に私自身が一番戸惑っていた。
だけど、走り続ける。
打算も駆け引きも一切捨てて、心の赴くままに。
嘘も偽りもない本音のトーク。
朝の満員電車の混み具合とは対照的に。
各駅停車の緩慢な動きとは裏腹に。
私の恋は、加速し続けていく。
【Fin.】
最初のコメントを投稿しよう!