疾走

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はじかれたように走り出す。 捕まりたくない。 お前には。 今はまだ。 我がままだと思われてもいい。上等だ。 むしろ、今までが従順過ぎたんだ。 歴史の授業はキライだった。 過去を振り返るなんて、ナンセンス。 そのわりに、夢を語ることもなかった。 夢なんて、小学校の卒業アルバムの中に閉じ込めた。 何を書いたか、思い出すのも無意味千万。 不自由はない。 現状に不満もない。 期待もない。自分にも。周りにも。 省エネ生活、大いに結構。 だから、考えて動いたわけじゃない。 ほんの少し足が動いたら、もう止まらなくなっただけ。 体はどんどん走り出す。 走り出す。 気持ちがじわじわ追いついてくる。 走っていることを認めていく。 捕まりたくないと焦っていることを、自覚していく。 後ろに、走る。 過去へ、走る。 このままの未来には、溺れたくない。 惰性の将来。 流されていく人生。 楽ちんなはず。 だけど。 逃げ出していくんだ、未来から。 見えた未来から逃げること。 悪いだなんて言ってるやつには、どうぞお先に。道を譲ろう。 変えられなくても、考え直せる過去はある。 いったんそこへ走って向かう。 省エネスイッチが切れたから、全力疾走、風を切れ。 走れる。 走れた。 まだ行けた。 未来のために、過去へ向かって走り出せ。
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