いつも一緒

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「でも、そんな毎日来てくれなくてもいいんだよ?」 本にしおりを挟みながら、彼が優しく微笑んだ。 「私がお兄ちゃんに会いたくて来てるんだもん。…それとも、迷惑だった?」 ベッドの横に置いた椅子に腰掛けながら、眉尻を下げて少し口を尖らせながら訪ねた。彼が昔からこの表情に弱いのを私は知っている。 「いやいや、嬉しいよ!俺は嬉しいけど、お前も忙しいだろうに、毎日大変じゃないかなと思って」 彼は慌ててそう言って、私の頭を撫でながら顔を覗き込んだ。 「寒いのにまた学校から走ってきたの?鼻が赤くなってる」 「うん、これもトレーニングの一環だよ。うちのエースがお休み中だから、私が代わりに頑張らなきゃね!」 彼はうちの高校の陸上部のエースだけど、私は体育の時間に「え?それで陸上部なの?」とクラスメートに言われるぐらいの残念な部員だ。それを知っているのに彼はまた優しく私の頭を撫でながら、 「そうだね。俺がいない間、お前には頑張ってもらわないと困るよ」 なんて優しい嘘をつく。 本当は部活なんてサボってもっと早い時間からお見舞いに来たいけど、そんな事をしたら真剣に陸上に取り組んできた彼が悲しい顔をするから、私も部活が楽しいふりをする。正直陸上部なんて、彼がいたから入っただけの部活だから、どうでもいいのだけれど。 ひと通り今日の部活の内容や私の身の回りの出来事を話し終わると、会話が途切れた。毎日来ているから、あまり新しい話題もないのだ。 静かになった病室で、遠くの話し声や廊下の足音を聞きながら、いつしか私は物思いにふけっていた。
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