ディアホワイトレーンディア

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 広大な雪原を真っ白なトナカイが駆け巡っている。アルビノ種の貴重な資料映像を、君は惜しげもなく世界中の人々に共有していた。私はただ、その数百万人の中のひとりになることができただけで十分だった。別に数百万人のうちの一番になろうとは思わなかったけれど、君に私の存在を知ってもらいたいという欲望は少なからずあった。  君のほんとの姿も声も知らなかったけれど、そのアイコンと数々の作品からイメージして、きっと色白の少年なんだと勝手に想像していた。よくよく考えれば、プロレベルの写真の腕を持つにはたくましいボディと長い年月が必要なんだと気づくはずなのにね。  君の映し出す幻想的な美しさの前ではね、私の鈍足がどんなに動こうともその差は開くばかりなんだ。もうちょっとだけ、早く走れたなら。光の速さを疑似体験できたなら。
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