時空走者

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 両親の遺影の前に、犬塚風斗はいた。  中学3年の春だった。  風斗は優しい叔母に引き取られた。見た目も性格も母親とよく似ていた。そのため、一緒にいるとどうしても思い出してしまう。  叔父は物静かだ。距離感を大切にしているのを感じる。感情豊かで賑やかな父親とは正反対だ。  やはり比べてしまう。思ってしまう。  目の前にいるのは両親ではないと。  両親はもういないのだと。  それでも彼らの優しさには応えなければ。  距離を近づけられなくても、離してはいけない。  風斗は悲しみを、胸に空いた穴を隠し、なるべく笑顔であるよう努めた。  そんなある夜、風斗はいつものように眠りにつき、目を覚ました。  しかし、彼がいる空間は見たことも無い場所だった。一面白が広がり、果てが見えない。  その場には、風斗を含め12人の少年少女がいた。皆、訳の分からぬ状況に戸惑っていた。 「ようこそ。時空走者たち」
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