走るための

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 見つける。双方の動きが一瞬止まる。動き出すのはあちらの方が早かった。走り慣れた脚とまだ慣れない車椅子。どちらが速いかなんて一目瞭然だった。 「待って、待ってくれ」  声は届かず脚はいなくなってしまった。  けれど確かにあれは俺の脚だったと思う。左脚のアキレス腱のところにほくろがあった。俺の脚の幽霊のようなもの。  どうして俺の脚は逃げたんだろう。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加