どこにでもある話

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ある日ゲームをしながら思った。あ、私かっこいいヒーローより可愛い乙女系男子が好きだわ、と。ゲームの画面には美少女と見紛う程の容姿端麗な男の子が映っていた。頑張り屋で、子供っぽい癇癪を起こすものの、学年主席をキープする頭の良さや後輩へ優しくものを教えるその姿が好きになったのだった。私がもし現実で恋をするなら、きっとこんな可愛い子じゃなきゃだめね、とも思った。 年が明け、春が来て、学校へ行かなくてはならなくなった。電車に乗りながらもゲームの男の子を思い出しながら「あんな子がいたら好きになれるのにな、まあどうせ無理だろうけど」と思っていたが、どうしても諦めのつかない自分もいた。 学校に着き、友人のそのまた友人と出会った。ふと笑った顔に一目惚れした。もろタイプだった。可愛い。美少女…ではなく、美少年でもなく、だが優しげな雰囲気と目元の可愛い笑顔が気に入ったのだった。 それからというもの、事あるごとに飴玉からドーナツに至るまで餌付けをした。そう、気分はペットの飼い主。可愛いでいっぱいの相手が見ていて飽きなくて、何処までも可愛がっていた。 ある時友人と恋バナをした。彼と仲良くなりたいと相談した。地道に話しかけるしかないそうだ。頑張ろう。ん?彼の元カノ…え、いたの?!ビックリしたなあ…他人に興味なさそうなのに、意外。え、去年?近くない?なんで別れたんだろ。 別れたという話を慌てて付け加えたことから、私へのフォローのつもりだったんだろうか。へえ、としか思わずに、驚きや新鮮さを感じたのみだった。嫉妬?なんで?そんなものはない。個人的にはあとから寂しさがちょっぴり滲んだが、元カノさんにも彼にも特に不快感はなかった。ただ、恋愛ごとに興味なさそうだったから…あれ?前そのほうがモテるとか聞いたような…あまりに下心なさげな雰囲気でわからなかった。 見た目は草食系だと思うのだが、友人曰く闇があるらしい。何のことやら。 さて、私は彼に恋をしているのか、それともただ親愛を抱いているのか。それはわからないが、ともかくこれから仲良くなるためにちょっとずつ動いていくことには違いない。 そんな、とある一年のお話でした。
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