一文字

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スランプなの。 そう言っておけば、なんだか安心する。言い訳するには、いい言葉。 なんて、今の若い子もかっこいいと言ってくれるかな、と時代がわからないまま、かつて持て囃されたペン回しをしながら、少しずつ進んでいく物語の前にいる。 ずっと好きだった人がいて、けれどその人はわたしの嫌いな人といて、わたしをずっと守り導いてくれていたあの人は、もうわたしを見てはいない。 昔は、あなたの営む星のよく見える浜辺のカフェで、色んな話をしてくれて、その翼で色んな景色を見せてくれた。わたしを守ってくれていたその翼は、もうわたしを抱きしめてはくれない。 スランプなの。 って言っておけば、指先で回しているペンを止める理由はない。まだ完結しない物語が進むスピードも落ちる。けれど時は刻々と過ぎ、その物語も色褪せる。 ペン回し?なにそれ。 そんな子たちを相手に紡ぐ物語は、昔話。空想に妄想。伝説と名がつけばかっこいいけれど、そんな逸話があれば、逆に聞かせて欲しい。 ねぇ、わたしの話、知ってる? なんて、わたしのこと知ってる? と聞きたくなる相手に、わたしは何を聞こうとしているのだろう。 一文字分物語が進む。 空想と妄想でできた文字。 一行増えた。 この道は、どこへ進み、どんな世界へと繋がっているのだろう。 かつてわたしを抱きしめてくれていた翼に、また出会えるだろうか。その温もりを感じ、久しぶりだね、と。いつぶりかな。と。まだ好き?なんて微笑んで。 一枚の羽根を手に取り、祈るように口づけをする。
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