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「高校の時…ね、私って男子に嫌われてたのよ。男より強い女子なんて、普通は嫌よね、しかも前科持ちだし。」
自分を指差しながら、肩をすくめて少し困たように笑うお姉。
あれは正当防衛じゃん、前科なんてナイナイ。
でも知らなかった。本人にとっては、あの一件って、嫌な思い出だったんだ。
「わりと仲良かった男子からも距離置かれちゃって…これでも悩んでたのよ?」
「悩んでたの?全然わかんなかった。」
「友達を殴ったりなんてしないのにね、でも理解してくれる人とか、相談もできる人って居なくて…辛かったなぁ。」
「私がいたのに!」
「小学生の?」
「はう、あ~…ね。」
「お父さんもお母さんも『ももこは強いから、大丈夫。』しか言わないし。」
「あーねあーね、わかるわかる。」
その後お姉は、慎二郎おじさんと話す機会があった。そしてお父さんお母さんは、娘には本当の強さが有るって心から信頼してることと、お姉に相応しい相手が必ず現れることを話してくれたらしい。
「慎二郎さんね『僕なら死ぬ覚悟でアタックする』だって。」
おい刺さっとる刺さっとる、決めゼリフがダイレクトに刺さっとるやん。
「わかっては…いるけどね。こんなの可笑しいって、でもね…。」
私の頭の中に、かつて慎二郎おじさんにもらったアドバイスが駆け巡った。
『いいかいすずな、本当に困った時とか悲しい時は、決して男子に相談しないこと。』
「なんでなんで?」
『人間の脳はね、助けてもらって嬉しい気持ちを、時に恋愛感情と錯覚してしまうんだ。』
どーすんだよおい慎二郎おじさん、自分でやっちまってんじゃんよぅ。
も~!明日試合どころじゃないし~。
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