思うままに、エッセイ

感謝は伝わる

「ありがとうございます」と素直な気持ちで言われるのは嬉しい。そう思えた経験がある。
　ある日、母と一緒にベーカリーのイートインスペースで昼食を食べていた。店内は満席でありにぎわっていた（コロナ前の話）。
　私達が座っていたのは入り口に一番近い席だった。パンを食べ終わり、後は飲み物を飲むだけとなった時、女子高生の集団が入って来た。
　店の中は、まだ満席であり、彼女達が座れるスペースはなかった。奥の方には、もう食べ終わっていたのにおしゃべりしている客がいたので、私は「気付いてあげて」と心の中で思ったが、私の思いは通じるはずはない。
　こうなったら、私達がゆずってあげるしかない。私は急いでアイスティーを飲み終えた。母も同じ思いだったのか急いで飲み始めた。母はホットコーヒーだったので、大変そうだった。そんな母に「頑張れ」と心の中でエールを送った。
　なんとか、飲み終わり、急いで席を立った。私達が急いだことが彼女らに通じたのだろう。「ありがとうございます」と言ってくれた。その言い方はとても素直で感じが良かった。それだけで、急いだかいがあったと思った。
　制服を着たままで、飲食することはおそらく校則に違反しているだろう。しかし、友達との放課後のおしゃべりは青春の大切な時間だ。
　彼女達が先生に見つかりませんように。そんな気持ちになれたひと時だった。