第三章 少年

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「貴様は後だ。それと、返す」  部屋の入り口に置いてあったずしりと重い、印つきの袋を、二人に向かって投げつけた。 「ほう。あの子どもを引き取るというのなら、返して当然だ」 「勘違いしていないか? 貴様らはここで死ぬ。金など必要なかろうに」 「石が詰め込まれているだけで、金貨の一枚もありません!」  使いの男が中身を確認して叫んだ。 「お主、騙したな!」  貴族の男が怒りをあらわにした。 「それがなんだ? 貧しい者達の人生を金の袋ひとつで、買い取ることがおかしいんだよ。本来、人生というのは価値などつけられないものなのに」 「黙れ、黙れ! 代々そうしてきたから、やったにすぎん!」 「だからと言って、赦されることではない」  ヴィアザは溜息を吐きながら言い、刀の切っ先を貴族の男に向けて駆け出した。 「邪魔だ」  突進してきた使いの男の心臓を刺し貫き、刀を引き抜く。続いて倒れそうになった骸を貴族の男に向かって蹴り上げた。骸を武器の代わりとして扱ったのだ。  大袈裟な動きで躱した貴族だったが、脚からの鮮血は止まっていないし、腰が引けている。 「金をやる! 言い値で! だから、生かしてくれ!」 「金なんぞ要らん」  ヴィアザは冷たく言い放ちながら、貴族の男の口を右手で塞いでから、心臓を刺し貫いた。鮮血が派手に飛び散った。 「また、怒られるかもしれないな」  ヴィアザは刺された腹と、鮮血が垂れている右手の手袋を見て呟いた。  惨劇と化した家を立ち去った。
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